<事件の概要> 平成16年4月8日、イラクで邦人男女3名が誘拐された。 3名は、ボランティアスタッフおよびジャーナリストらしい。 犯人の要求は、「自衛隊の撤兵」である。 平成16年4月10日、犯人より「24時間以内に人質を解放する。 日本国民には、政府に「自衛隊の撤兵(撤退)」を訴えて欲しい。」と、 カタールの衛星テレビ、アル・ジャジーラを通じて声明。 平成16年4月15日、別の邦人2名行方不明。先に誘拐拘束された邦人3名無事解放。 平成16年4月17日、不明の邦人2名、無事解放。2004.4/12
犯人より、「人質を解放する」という声明が出されたが、今の所、解放は されていない。 犯人像の予想については皆喧喧囂囂だが、日本政府やアメリカも、満足な 情報は得ていないようだ。 結局、犯人の「善意」に期待するしかない状況である。 犯人は解放の理由として「日本国民は自衛隊派兵に反対しているから。」 と言っているらしい。今、人質を殺して日本世論を敵に回すのは得策では ないという判断のようだ。 「日本人」に対し、意外なほど「期待」を持っているようだ。多分、 その期待は遠からず「失望」となり「憎悪」となるだろう。 自衛隊撤兵(撤退)の世論は、大きなムーブメントとはなり得ない状況 だと思える。一番の世論は「イラクへの無関心」。自衛隊派兵(派遣)に 関しても、意外なほど無関心に思える。 「自己責任」について。 今回の事件について、「危険で、退去勧告が出ていたイラクにのこのこ 行って被害にあった被害者達は、自業自得である。」「予想されていた 事態である。」という意見がある。 確かに、イラクは日本国内に比べて強盗や誘拐も多いようだが、もともと 民間人がボランティア活動をしていた。後から自衛隊が派兵(派遣)された。 その結果、日本人にとってのイラクの危険度が増したのではないか。 まぁ、卵が先か鶏が先かの話ではあるが…。 もう1点。自己責任を訴える人たちは、日本国内に居れば「テロから安全」 だと思っているようだが、当然日本国内もテロの標的である。 自衛隊派兵(派遣)を決定した事によるリスクをどれだけの人が「覚悟」 しているのか。もし、日本国内でテロに見舞われても「自業自得」「予想 していた事」の一言で済ませるつもりなのだろうか。 「いたずらにテロを恐れて萎縮する必要はない。」「テロに屈しては いけない。」という意見には同意するが、間違った判断や下手な見栄や 面子で、受けなくてもよい「憎悪」を受ける結果になっては本末転倒だと 考える。 今の日本政府は、口では「イラク復興のため」と言っているが、明らかに イラク国民ではなく、アメリカの方に顔が向いている。2004.4/9
政府は、「自衛隊の派兵(派遣)は、復興支援のためである。 戦闘には参加しない。」「戦闘地域となれば、撤兵(撤退)する。」 と言っていた。しかし、「戦闘地域であるかどうか」の基準など 曖昧模糊としている。アメリカの手前もあり、そうそう簡単に 撤兵(撤退)など出来ない。 これは、自明のことである。 さて、今回の事件である。イラク国内にいるボランティアスタッフ などの民間人を狙った犯行は「卑怯」であり「卑劣」。 逆にいえば、そこまで追い詰められてしまっているのであろう。 無差別攻撃の恐怖により相手を屈服させようとする手法は、ほぼ 「テロリズム」と同じ。 軍隊(自衛隊)に対する憎悪も、我々が思っている以上なのだろう。 今後は、日本国内がテロの標的になる可能性もグンと高くなった。 しかも、警備の厳しい首都圏よりも、地方都市の方が危険度が高いと 予想する。 今回の事件、どのような解決があるだろうか。 案の定、政府は「自衛隊の撤兵(撤退)は、しない」と明言した。 打算、下手なプライドや面子で犠牲になるのは、一般市民や何も 判らない子供達である。 ヨド号事件の時に人命優先の「超法規的処置」で、犯人の要求をのんだ 頃に比べれば、日本もずいぶんと「普通の国」になってしまったものだ。 日本は色んな意味で「特殊な国」であったと思うが、これも時代の流れ だろうか。アメリカにも、日本の「特殊」を大目に見ているだけの余裕 は今はもう無い。 そうなると、日本の存在意義も無くなるって事だと思うんだけどね。 政府は「全力で、人質を保護する」と言うが、自衛隊や日本政府に イラク国内に潜伏する犯人のアジトを探し出す能力は無いだろう。 アメリカ軍などが協力してくれるかもしれないが、見つけ出すのは 至難の業だろう。 さらに、犯人を見つけたとしても無事救出するとなると。 犯人は、自爆も辞さない覚悟を持っているはずである。 となると、犯人が「生かして解放する」か「予告どおり殺害する」 か。生殺与奪の鍵は相手側にあることになる。 そして、犯人には犯人の面子がある。仏心を出して、解放すれば 舐められる。相手に恐怖を植え付けるのが犯人の目的だとしたら…。 どうして、こんな事になってしまったのか!?。 本当に、イラク国民は自衛隊による復興支援を望んでいるのか? 別に、「卑劣な犯人の要求に屈して」ではなく、もっと早い段階で 自主的に撤兵(撤退)するという道もあったのではないのか?。 一つの解決方法として、嘘でもいいから「要求をのむ」と言う。 そして、自衛隊も一旦撤兵(撤退)する。そうなれば、犯人も人質を 解放せざるを得ない。その後に、犯人を叩き潰す。 通常の誘拐事件でも、身代金を払うと見せかけて捕まえる手法が 一般的だと思うので、それほど無茶な案ではないと思う。 しかし、そうなれば約束を反故にされて激怒したイラク国民(全員 では無いでしょうが)との全面戦争となるでしょうが…。 信頼関係は崩れて「復興支援」どころでは無くなってしまうでしょう。 一点だけ解せないのは、今まではいきなり爆弾を使ったり銃撃して おいて、犯行声明も出さない方法が主流だったのに、今回は犯行声明を マスコミに送りつけて、3日の猶予を設けている。 これは、日本に対してまだ期待を持っている表れなのか、それとも 実は身代金が目的で裏で交渉しているのか…。 被害者の無事をお祈りいたします。