表紙
ネット『ペポ』4号

(小説)

「ジラフのラブアタック大作戦!」(第一回)



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              「ジラフのラブアタック大作戦!」(第一回)
                                              作: BMA (No.232)
     
     
     この物語はジラフやアン教授が、トッピーやラナ達と出会うずっと前、
     2人がまだ恋に堕ちる前の物語です・・・。
     (もちろん僕が勝手に考えた・汗)
     
     
     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
     
     
     「こんな物いただけません。」
     困った様子でアン教授
     が答える。
     
     「いいや、アン君、美しいものには美しいものが良く似合う・・・これは君に
     こそ相応しい。」
     レオタード姿の気取った紳士は、半ば無理やりにアン教授の手をつかみ、
     アン教授の指にその指輪をはめた。
     「それは僕からのプレゼントです。受け取って下さい。」
     
     (私、別にこんな物に興味はないんだけどなぁ・・・)
     アン教授は心の中でつぶやいた。
     
     「あの時の答えを今すぐに出せとは言いません。」
     「あなたにその気がなければ、それを捨ててもらっても構わないんです。」
     真剣な眼差しで紳士は言った。
     アン教授は、やはり少し困った表情でその指輪を見つめている。
     
     しばらくの沈黙の後、紳士は笑って答えた。
     「今日はあなたと過ごせて楽しかったよ。では、また・・・。」
     そう言って紳士は車に乗り込んだ。
     
     「本当に、送っていかなくてもいいのかい?」
     紳士は車の窓を開け、運転席からアン教授に向けて言った。
     
     「ええ。今日はありがとう、ジェド。」
     
     ジェドは軽くうなずき、窓を閉めて車を走らせた。
     
     走り去るその車を見つめながらアン教授はつぶやいた。
     「やっぱり・・・、来るんじゃなかったなぁ・・・。」
     
     夜中を街を彩るクリスマスのイルミネーション。
     小雪のちらつく、12月24日の出来事であった。
     
     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
     
     ある朝。
     
     「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・」
     
     
     息を切らせながら一人の若者が急いで廊下を走っていく。
     そして、勢いよく研究室のドアを開けた。
     (バン!)
     「す、すみません!・・・はあ、はあ、・・・お、遅れて・・・はあ、はあ、
     ・・・しまいました・・・ぜえ、ぜえ。」
     
     その音にびっくりしたアン教授が振り向く。
     「あら、ジラフ君。どうしたの?そんなに急いで・・・。」
     
     「どうしたの?って・・・ぜえ、ぜえ、・・・もう1時間も・・・はあ、はあ、
     ・・・遅れて・・・。」
     激しく息を切らせて、今にも死にそうな顔でジラフは言った。
     
     「え?1時間・・・って、まだ、7時40分だけど・・・。」
     
     「へ?」
     ジラフは自分の腕時計と研究室の壁掛け時計とを見比べてみた。
     「・・・ははは・・・・・はぁ・・・。」
     ジラフは苦笑いをし、ため息をついた。
     そして、膝から倒れこむ様にうなだれて言った。
     「僕の時計・・・、9時で止まってるようです・・・。」
     
     きょとん、とした表情を浮かべ、アン教授は突然笑いだした。
     「フフフ・・・、ジラフ君、昨日、時計付けたまま実験室に行ったでしょ?」
     
     「え?そう言えば・・・。」
     
     「きっと、その時、磁場にやられたのね。昨日はマトリ教授が実験室を使って
     いたみたいだから。」
     「ジラフ君、ちょっと注意力が足りないみたいね。」
     笑いながらアン教授が言った。
     
     「は、はい・・・。」
     しょんぼりした顔でジラフは答えた。
     
     ジラフとアン教授は同じ研究室に所属している。
     アン教授は非常に優れた研究者で、専門は物理学なのだが、
     今はある研究のために考古学の方に専念している。
     ジラフはアン教授の後輩にあたる。まだ、うだつの上がらない研究員だ。
     
     「おはようございます!」
     もう一人の若者がやって来た。
     
     「あ、ジビー君、おはよう。」
     気づいたアン教授が答える。
     
     ジビーはジラフとは同期であり、同じ研究所の研究員だ。
     
     「ジラフ、どうしたんだ?汗だくで・・・。」
     床に座り込んでいるジラフを見て、ジビーが不思議そうに言った。
     
     「い、いや、その、何でもないよ。ははははは・・・・・。」
     ジラフは笑ってごまかした。
     
     こうして研究所の一日が始まる。
     
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
     
     やがて、陽は暮れて外は真っ暗になった。
     もう、夜中である。
     
     ジラフは研究室の時計を見た。
     「あ、もうこんな時間か・・・。」
     
     「じゃ、今日はこの辺で・・・。」
     大きく腕を伸ばしながらジビーが言った。
     
     「あ、私は今日中にやっておきたい事があるから、もうちょっと残っておくわ。」
     「二人とも先に帰っていいわよ。」
     
     「じゃ、アン教授、お疲れ様。」
     ジビーが言った。
     「おつかれ。」
     ジラフも続けて言った。
     
     ジラフとジビーはコートを羽織って研究所を後にした。
     もう2月、外は身を突き刺すよな寒さだった。
     後ろを振り返ると研究室の窓の明かりが灯っている。
     
     二人は歩きはじめた。
     
     「アン教授、がんばるなぁ。」
     感心した様子でジビーが言う。
     
     「あんまり無茶して体を壊したりしなきゃいいけど・・・。」
     ジラフが心配そうに言った。
     
     するとジビーがニヤつきながらジラフの顔を見た。
     
     「な、なんだよ。」
     気分を害したのか、少し不機嫌そうにジラフが言う。
     
     「なあ、お前、アン教授にホの字なんだろ?」
     
     「な!な!な!何を・・・!」
     いきなりのジビーの鋭いつっこみにジラフは焦った。
     
     「ははは、やっぱりそうか。」
     してやったりといった表情でジビーが笑う。
     
     「だ、だったらどうだってんだ!そうか分かったぞ!ジビー、お前もアン教授
     の事を・・・。」
     怒りながら興奮ぎみにジラフがジビーに迫る。
     
     「ちょ、ちょっと待てよ。アン教授は俺の先輩。それだけさ。」
     ジラフをなだめながらジビーが言う。
     
     「ほ、本当だろうな!ぬけがけは無しだからな!」
     ジラフの鼻息が荒くなっている。
     
     「お前も疑り深い奴だなぁ。」
     ジビーはあきれた様子で答える。
     「でもな、ジラフ・・・・・」
     「今の内に言っといた方がお前のためだから言うけど・・・」
     
     「な、なんだよ。」
     
     「アン教授には既に男がいるんだよ。いいとこ出のぼっちゃんで、やり手の青
     年実業家だってさ。」
     気まずそうにジビーが言う。
     
     「な!?」
     ジラフが突然、足を止める。
     それにつれてジビーも止まった。
     
     ジビーは続けて言った。
     「研究所内じゃ有名な話さ。」
     「イヴの夜も二人っきりで・・・。」
     
     「な、な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
     ぇぇ!!!」
     街中に響くような大声でジラフが叫んだ。
     たまらずジビーが耳をふさぐ。
     
     「きょ、きょ、きょ・・・教授に・・・・・」
     「う、嘘だ!そんなの嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」
     (モゴッ)
     あまりにもうるさすぎるので、ジビーがジラフの口を抑えた。
     
     「お、おい、落ち着けよ。」
     
     ジラフはジビーの手を強引に払い除ける。
     「こ、こ、これが落ち着いてられるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
     さっきよりジラフの元気がなくなっている。
     やはり言うべきではなかった・・・とジビーは後悔した。
     
     「そ、そんなぁ・・・・・。」
     ジラフは口をあんぐりと開け、放心状態となった。
     
     「大丈夫か?ジラフ・・・。」
     
     大丈夫であるはずがなかった。
     ジラフの顔はやがて半泣き状態となった。
     ジビーは、すまなさそうにジラフの方を見ている。
     
     「ジビー・・・」
     突然ジラフが呼びかけてきた。
     
     「なんだ?」
     
     「今日は・・・今日は・・・・・」
     「とことん付き合ってもらうぞ!」
     ジラフはジビーの腕をつかみ、無理やり引っ張っていく。
     何かが吹っ切れたようだ。
     
     「ええ?今からか?」
     
     ジラフの勢いに引きずられるかたちで、二人は街の居酒屋へ・・・。
     
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
     
     ジラフはやけ酒をしている。
     「おい、ジラフ、もうその辺にしておけよ。お前、元々そんなに飲めないんだ
     から。」
     
     「もう、いいんだ僕なんか、僕なんか・・・。」
     もうジラフはべろんべろんに酔っている。顔は真っ赤。声は涙声である。
     
     「なあ、いい加減にしておかないと明日がつらくなるぞ。」
     
     ジラフにはそんな言葉は届いていなかった。
     手元のグラスに入った酒を一気に飲み干す。そして、また酒を注ぐ。
     
     「当然だよなぁ・・・・・。」
     ジラフがまた涙声でしゃべる。
     「僕はドジで、マヌケで、トロくって・・・。」
     「うだつの上がらない研究員より、お金持ってるやり手の実業家の方がいいに
     決まってるよなぁ・・・。」
     そして、また酒を飲み干す。もちろん涙声で。
     
     「おい、失恋感情に浸るのもいいけどなぁ、お前まだアン教授にふられた訳じ
     ゃないんだぞ。」
     「告白すらしてないじゃないか。」
     
     「!?」
     その言葉に初めてジラフが反応した。
     
     「ジラフ、もう諦めるのか?お前のアンに対する想いはそんなもんだったのか?」
     
     ジラフは台の上に思いっきり拳を振り下ろし言い放った。
     (バンッ!)
     「そんな事はない!僕のアンを想う気持ちは絶〜っ対、誰にも負けない!」
     周りの人間にとってみれば、今のジラフはタチの悪い酔っ払いだ。
     
     「分かったから少し静かにしろって。」
     ジビーはジラフをなだめる。
     「だったらさぁ、思い切ってアンに告白してみたらどうなんだ?」
     
     「え?えええええええええ!・・・・・」
     (モゴッ)
     ジビーはジラフの口を抑え、恥ずかしそうに周りを見わたす。
     「頼むから静かにしてくれよ・・・。」
     今度はジビーの方が泣きそうである。
     
     「こ、こ、告白だなんて・・・そんな・・・・・。」
     ジラフは再び小声になる。
     「僕がどんなにがんばったところで、相手は青年実業家、おまけに金持ち・・・。 」
     「敵う訳がないじゃないか・・・・・。」
     ジラフはまた涙声に戻った。
     
     (お前、強気なのか、弱気なのか、どっちなんだよ!・汗)
     ジビーは心の中でつぶやいた。
     
     「なんだか、お前、さっきから金やら稼ぎやら、そんな事ばっかり気にしてな
     いか?」
     「金や稼ぎで勝負してダメなら、他の事で勝負していきゃいいんじゃないか?」
     「アン教授を想う気持ちなら誰にも負けないんだろ?」
     
     「!?」
     その言葉にまたジラフが反応した。
     「そうか・・・、そうだ!そうだよ!」
     「お金じゃないんだ!こころなんだ!ハートなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
     ぁぁぁぁぁぁ!!」
     
     ジラフは台の上に片足を上げ、右手を高らかに上げて叫ぶ
     
     「金がなんだ!僕は金じゃ買えないモノで勝負すんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
     「そして、必ずやアンをこの手にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!・・・・・」
     (モゴッ)
     ジビーはまたジラフの口を抑え、台から降ろそうとする。
     「ジラフ、いい加減にしろって・・・。」
     が、ジラフはそれを振り切る。
     「愛なんだ!ハートなんだ!愛こそ永久(トワ)なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
     ぁぁぁぁ!!・・・・・・・」
     (モゴッ)
     (いかん!完全に酔ってる。)
     ジビーは暴れるジラフを強引に台からひきずり降ろし、なんとか店を出ようと
     する。
     「す、すみません。勘定ここに置いときます。」
     ジビーは店の人に平謝りしながら酔ったジラフをひきずり店を出た。
     
     「明日だ!明日からだ!アンへアタックするんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
     ぁぁぁ!!」
     ジラフの叫び声が虚しく夜の空に響いた。
     
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
     
     <翌朝>
     
     「お、おはようございます・・・。」
     大きなアクビをしながらジビーが研究所にやってきた。
     
     「おはよう、ジビー君。あら、なんだか顔色が悪いみたいだけど大丈夫?」
     アン教授が心配そうに答える。
     
     「ええ。・・・ちょっと、昨日の疲れが残ってるだけですから・・・。」
     そう言うとジビーは苦笑いを浮かべた。
     「あれ?・・・そう言えばジラフは?」
     
     「さぁ、・・・まだ来てないみたいだけど・・・。」
     アン教授も首をかしげている。
     その時だった。
     
     (トゥルルルル・・トゥルルルル・・)
     電話が鳴った。アン教授がでる。
     
     「はい、こちら・・・」
     『も、もしもし・・・ジラフですが・・・(ウプ)』
     ジラフからであった。今にも死にそうな声だ。
     「ジラフ君?どうしたの?」
     『ちょっと、・・今日は調子が悪いみたいなんで・・・や、休ませてほしいん
     ですが・・・。』
     「ええ、分かったわ。研究課長の方には私から連絡しておくわね。」
     『は、はい・・・すみません・・・』
     「随分苦しそうだけど、大丈夫?」
     『は、はい。・・・で、では。』
     
     ジラフは早々に電話を切った。
     
     (やっぱり、二日酔いだったか・・・。)
     (今日からアタックするんじゃなかったのかよ!・汗)
     ジビーは呆れた様子だ。
     
     「ジラフ君、どうしたのかしら・・・」
     
     「さぁ・・・」
     ジビーはあくまでしらをきる。
     (この先、大丈夫かな?ジラフのやつ・汗)
     
     何はともあれ、こうしてジラフのラブアタック大作戦は幕を開けたのでありま
     した。
     
                                                               <つづく>
     
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